歳の頃なら20才前後で、容姿もごく普通、俗にいうケバさもないその彼女は、私の横に座るなり、膝にのせた大きなカバンの上に、これまた大きなお道具箱を出したかと思うと、
「ここは貴方のお部屋ですか?」と聞きたくなるぐらい落ち着いて堂々と化粧を開始した。
よくは解らないが、お肌の手入れからはじまって、大きな手鏡を取り出すや、まつ毛の装着、まゆ毛・目もと辺りのお絵書き、そしてロ紅、ムムッロ紅はしないようだが・・・まあいい。
これで終わりかと思いきや、指先に何かをベットリ付けて髪の毛をネジリ起こし、喫茶店で出されるような簡易お手拭きで汚れた手を拭く周到さ、
「さっきの子とちゃうヤン!」
と言いたくなるくらい、ケバめのお姉ちゃんが横に座っていた。
そしてこれは序章に過きず、話しはまだまだ続いたのだ。
先程のお手拭きの出現を、一連の行為の締めくくりと見てとった私は、この後、彼女に心の中で「参りました。」と感服させられることになる。
きれいに拭き直された手で、今度はラップに包んだおにぎりを食べはじめたのだ。
そのおにぎりは、明らかに手づくりで、2つ。
車中で化粧をするくらいだから、きっと寝起きの悪い彼女が自分でつくったはずもなく、多分娘にアマい母親が早起きしてつくったおにぎりだろう。
と勝手な想像が頭の中をかけめぐるくらい、この時点で、最早、ひげおやじや回りの乗客の思考は強引にも釘付け状態。トホホ
「ごちそうさま。」と声には出さなかったが、明らかにご満悦の様子で、ロ紅を念入りに塗り上げる。
(そうか、ここでロ紅か・・・、計算され尽くしている。)
続いては携帯電話を取り出して、電話を一本友達?へ。
さすがにこれは遠慮もあるのか、小声で二言三言他愛のない会話で終了し、その後数件のメール作業を片付ける働き者ぶりも披露。(拍手)
やがて音楽鑑賞へとたどり着いた彼女は、イビキこそ聞こえなかったが、腰をズリ下げて座り爆睡モードへ。(お疲れさまでした。)
「あの〜、すんません、降ります。」
三宮駅で降りたい私が、勇気を振り絞って一声かけなかったら、彼女は何処まで寝るつもりだったのだろう。
朝から器というか度量の大きな生き様を目の当たりにして圧倒され、明日は「電車女」に遭遇しないように、別の車両に乗ろうと心に誓うひげおやじでした。





